市民参加型の花の一斉調査、「北海道フラワーソン2022」(北海道新聞社、北海道新聞野生生物基金など主催)が6月18日、19日の両日、道内全域で行われ、約2700名が各地区を担当して、野生植物の開花状況を記録した。
フラワーソンは1997年の第1回以降5年ごとに開催され、今年が6回目となる。グループごとに任意の場所を調査して咲いている花を報告、これを約10キロ四方のメッシュごとに集計して、花の分布状況をまとめている。
今年のフラワーソンは約2,700名が参加し、400グループから結果の報告があった。得られたデータは約56,000件で、554地区で調査がなされた。これらの数値は第3回以降ほぼ同程度で、過去と同じ規模の調査を実施することができた。
報告があった地区は全道の約半数で、特に札幌周辺の地区で多くの報告があったが、今回は道南の大沼公園や帯広などでも報告データが多かった。
「フラワーソン」は「フラワー・ウォッチング・マラソン」の略語で、一般市民が6月中旬の二日間、全道一斉に野の花の開花状況を調べる催し。5年に一度の開催で、1997年6月に第1回を実施して以来、今回で6回目となる。
道内の植物の状況と変化を調べて記録するとともに、仲間と野山を歩く調査を通じて、環境に対する意識を高めることや、活動を通じて地域間のつながりを深めることを狙いとしている。同時期に調査するため、その年の季節の進み具合が明確にわかる。
確認した花を全て報告する一般調査と、指定した10種類について報告する特定種調査があり、今回はさらに花を訪れる昆虫10種の確認調査も実施した。
フラワーソンでは、担当する地区で見た花全てを報告する「一般調査」と、あらかじめ指定した花や昆虫を報告する「特定種調査」の2種類を実施している。
このうち一般調査では、約1040種の花が報告された。開花の報告が多かった花は、これまでと大きく変化はなく、牧草であるシロツメクサが2回連続の一位となった。前回同様上位7位までが外来種となるなど、全体的に外来種が増加する傾向があったが、これは季節の進みが早かったこと(後述)も影響している。
フラワーソンでは事務局で指定した10種類の植物について、各地区にあったかどうかを記録してもらっている。今回の結果はグラフの通りで、コウリンタンポポやマイヅルソウが全道で広く見られている。前回までと基本的な傾向は変わらないが、季節の進みが早いことが影響してか、開花が終わりつつあり、確認地区も減った花も見られた。
訪花昆虫は、前回と大きく結果が変わらなかった。その中で三色タイプのマルハナバチが減少しているのは、昨年猛暑で働きバチが大幅に減少した影響を受けている可能性がある。
フラワーソンは「咲いている花」を調べる調査のため、季節の進み具合が結果に大きく影響する。確認上位の花に占める「春の花」と「夏の花」の比率で、これまでの実施年と比較すると、今年は今までで最も春の花が少なく、夏の花が多い年となった。冬には全道的に記録的な積雪となったが、その後暖かい日が続き、雪どけ・植物の成長が急速に進んだことが影響したと思われる。フラワーソンの結果からも、この25年間の温暖化の傾向は見てとれるようである。
外来種でも、近年分布を拡大しているような花は、調査を重ねるに従い、分布を広げる様子を把握することができる。これまでも増加傾向が注目されていたキバナコウリンタンポポは、1997年に2%だった確認地区率は前回19%まで増加していたが、今回は30%となった。道路法面などを通して増えていくさまがよく分かる結果となった。
そのほか、ウスユキマンネングサ(9%)、コテングクワガタ(15%)なども増加が目立った。
野生化して生態系への影響が懸念されている特定外来種のセイヨウオオマルハナバチは、今回20%の地区で確認された。2007年の初調査時の12%以降、徐々に分布が拡大しており、特に海岸草原や農地周辺での広がりが見られる。
過去の結果との比較が注目される植物として、豊凶がはっきりしている花がある。5年に一度豊作年が訪れるバイケイソウはその一つで、2012年を除く調査年で大豊作だった。今年は46%の地区で確認され、大豊作の年といってよかったようである。
また、数年~数十年に一度一斉開花することで知られるササ類も今年は開花がよく見られた。これまでの調査で2~5%程度だったクマイザサの開花率は今年は12%と非常に高く、北海道西部でまとまって開花が見られるという結果になった。5年に一度の調査を長期的に続けることで、それぞれの植物の特徴も見えるようになってきたと言える。
フラワーソンも開始から四半世紀を迎え、6回分のデータを積み重ねることができた。現代の自然環境は様々な脅威にさらされているが、データですぐに分かるほどの大きな変化は実際にはなかなかない。このような地道なデータを長期にわたって積み重ねることで、温暖化の影響なども少しずつ見えてくる。
参加者も高齢化し、特に地方では参加グループ数も減る中でも、博物館や学校などの組織も加わって調査を続けてこれたことで、フラワーソンは貴重な成果を生みつつある。それぞれの地域、それぞれの植物の姿を重ねられる機会として、この調査が今後より重要になってくることが期待される。